モーテル・クロニクルズ

  • 2017.08.02 Wednesday
  • 01:02

 

 

 

 

サム・シェパードが亡くなった。私はサム・シェパードの熱心なフォロワーではないが、「パリ、テキサス」は何度だって観た。でも何と云っても「モーテル・クロニクルズ」は最も影響を受けた書物のひとつだし、そこに書かれていたアメリカは自分のアメリカのイメージそのものだった。中でも1/1/80 Napa,Ca,の59年性の赤いインパラの文章は、最も美しい「スローモーション文体」の一つで、一際影響を受けた散文だ。今でもこの文章は何かを書くときには必ず心の片隅にいる。
 
原文も良いのだが、やはり、ちくま文庫の日本語訳が染み付いているので完コピで。

五十九年型の赤いインパラが、ナパの豊かな牧草地の間を静かに進んでくる。車体は改造され、飾り立てられて、アルミニウムのスカートを付けている。道の上に、車はそれだけだ。今日は新しい十年間の第一日目だが、ぼくはこの車の出現に何のしるしも認めないことにした。とりわけ時代の幕開けのしるしなどは絶対に、だ。ぼくは銀色のトラックの中に、ぼくの母とぼくの息子とぼくの犬と一緒にすわっている。死んだようにじっとしている。ぼくは赤い車から目を話すことができない。それがすべるように進む様。それがきらびやかな都会の匂いをふりまきながら、この緑深い田舎の風景を切り裂いていく様。大気をゆっくりと切断していくそのクロームのアンテナ。彼方の塔から送られてくる電波を狩り集める邪悪な魔女の杖。

ぼくの母がぼくの息子に話をしている声が聞こえる。ぼくの祖父と父と、鶏の話である。そのあらましはこんな風だ。

ーーーー 中略 ーーーー

赤いインパラは大きなユーカリの木の生垣の間に消えた。牧草地は雨でしっとりと濡れている。体を動かす気になれない。このままトラックの中に住みたい。タイヤの間から雑草が伸びでくるままにまかせていたい。


80/1/1
ナパ。カリフォルニア

 

 

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